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日本人は糖尿病になりやすい

2009年5月18日


公立学校共済組合北陸中央病院
内科医長:大家理恵


メタボ対策の理解広がる


 人間ドックでメジャーを持ち出すと、腹囲測定に協力的な受診者の方が多く見られます。これは、今春から始まった糖尿病発症予防を目的とした特定検診についての基本的な考え方であるメタボリックシンドローム対策への理解が広まったことの表れだと思います。
 ところで、日本人の糖尿病予防でメタボ対策がこれほど強調される背景の一つには、インスリン分泌能がもともと低いという民族の特性があります。


低い肥満度で糖尿病を発症


 インスリンは体内で糖尿を下げる作用をする物質です。糖尿病の95%以上を占める2型糖尿病は、肥満や運動不足によってもたらされるインスリン抵抗性(インスリンを効きにくくする生態機構)と、インスリンの量的不足である分泌不全という二つの主な要因で起こります。
 日本人は欧米人に比べ低い肥満度で糖尿病を発症するといわれています。この要因の一つは、日本人のインスリン分泌が白人の半分程度と低いためと考えられています。従って、今回のタイトル、「日本人は糖尿病になりやすい?」の答えはイエスです。


一週間に一度、徒歩や自転車での通勤を


 しかし、私たち日本人の中でも個人差があります。上の図は当院で過去2年間に人間ドッグを受診し、糖尿病予備軍(IGT)と診断された347人の検査結果です。
 これによると、同じIGTでも、腹囲によって糖負荷検査でインスリンの分泌総量が大きく異なることが示されています。
 具体的には、腹部肥満のある人(Q3、Q4)は、腹部肥満のない人(Q1)より多くのインスリンを分泌しているので、内臓脂肪を減らすことでインスリンを効きやすくすれば、本来十分に分泌されているインスリンを効率よく使って高血糖への進展を防ぐことができるといえます。
 逆に腹部肥満のない人(Q1)では、もともとインスリンの分泌量が少ないので、軽度の脂肪蓄積で糖尿病に進展しやすい可能性があることを示しています。従って、この点を指摘することで、糖尿病に対する注意を促すことができます。
 不治の病と日々向き合っている私たち医療者から見れば、糖尿病は克服する手段がある病気です。インスリン分泌能は遺伝的に決定されていますが、肥満や運動不足は私たちの意志で変えることができるからです。一週間に一度でいいですから、徒歩や自転車で通勤して、内臓脂肪をためない努力を始めませんか。
 効果が出れば、糖尿病人口の急増に歯止めがかかるだけでなく、子供たちにも範を示せるでしょう。人間ドックでそのお手伝いをさせていただくことにやりがいを感じています。

共済フォーラム(2008年6月)掲載


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