新年のご挨拶
更新日: 2026年1月1日
新年のご挨拶
皆さん、あけましておめでとうございます。今回の年末年始は9連休という長期休暇になりました。患者さんには大変にご迷惑をおかけしました。しかし、病院内では入院患者さんや外来の救急患者さんのために、多くのスタッフが年末年始期間も病院に勤務していました。医療従事者として当然の事ではあるのですが、1年の疲れを癒すための休暇期間中も、献身的に働く多くのスタッフがいた事に対して、病院長として心から感謝の意を表したいと思います。
来るべき令和8年の干支は午(うま)です。より正確に言えば「丙午(ひのえうま)」とされています。馬は、古くから人間とともに生きてきた動物で、駿足を持ち、独立心が強く、また人を助けてくれる存在とされて来ました。特に丙午(ひのえうま)の年は、「勢いとエネルギーに満ちて、活動的になる」年とされています。干支にちなんで、今年が患者の皆さんにとっても北陸中央病院にとっても、勢いとエネルギーに満ちて、活動的になって飛躍する1年になることを心から願っています。
さて、昨秋の自民党総裁選挙では、タカ派の高市早苗氏が女性初の自民党総裁となりました。その後は、わが国初の女性総理大臣に就任し、これまでの自民・公明による連立与党を解消して、新たに自民・維新による連立与党を誕生させました。政策については、アベノミクスに似たような積極的財政策により、日経平均株価が5万円の大台を超え、ガソリン税の暫定税率が廃止され、所得税が生じる「年収の壁」が178万円に引き上がり、赤字経営で苦しむ医療・介護の分野にも補助金の注入が決定されるなど、日本経済は今のところ順調に動き出しているように感じます。しかしながら、依然として円安は続いているため、未だインフレによる物価高が長引いており、家計を圧迫しています。また、高市首相の国会での台湾有事に対する答弁に対して、中国が反発し日中関係が急速に悪化した事で、軍事的緊張が高まっています。その他に、パンダの中国返還が決まったり、民間の経済活動にまで悪影響が出たりしていますが、これはタカ派の高市政権になった時点である程度は予想された事かも知れません。さらに、自民・維新政権では、「政治と金の問題」がこれまでより多く噴出しています。維新が提案した国会議員の定数削減問題も審議が先送りされており、巷では早くも、自民・維新政権は長続きしないのではないかという声も聞かれています。
さて、令和7年を振り返りますと、クマ被害が続発し、クマによる死傷者数が230余人にもなった1年でした。この1年を総括する漢字も「熊」が1位にランクされましたが、日本からパンダがいなくなる事もクマ被害の1種と言えるかも知れません。また猛暑の影響で、令和の米騒動と称されるほど米の流通量が減り、店頭価格も高騰したため、政府備蓄米が放出された1年でもありました。一方、明るい話題としては、日本から2名のノーベル賞受賞者(生理学・医学賞に坂口志文氏、化学賞に北川 進氏)が出たことが挙げられます。お2人とも、論文を発表した当初は、「うそつき」呼ばわりされたそうですが、愚直に信念を貫いた結果がノーベル賞に繋がったそうで、なかなかマネの出来る生き方ではないと感心しました。
北陸中央病院においては、10年ぶりに赤字転落するかも知れない厳しい経営業況の1年となりました。これから3月末までの3ヶ月間に盛り返して、令和7年度も何とか経常黒字に持って行きたいところです。富山県内の全公的病院においても、経営状態が厳しく、おそらくいずれの病院も赤字経営に陥る事が予想されています。その救済策として、前述の高市政権が打ち出した補正予算による病院への補助金の投入は大変にありがたい事ですが、根本治療としては令和8年度の診療報酬改定が大幅にアップされる事しかないのですが、どうも財務省の財布のひもが固そうで、期待するほどのアップには繋がらない情勢です。つまりは、働けど働けど病院の赤字が膨らみ、地域医療の崩壊が進んで行く事が予想されます。当院は公立病院ではありませんので、赤字を出した場合でも行政から税金を注入してもらう事は決してありません。あくまでも独立採算制で経営している病院なので、赤字経営は絶対に避けなければなりません。患者さんが訪問しやすい敷居の低い病院となれるように、スタッフ一同、努力して頑張って行く所存です。
富山県の人口も100万人を割り込みましたし、小矢部市の人口もすでに28,000人以下に減少しています。それに伴って、北陸中央病院での入院および外来患者数、手術数(一部の科を除く)、検査数、人間ドック受診者数、救急車受入れ数などもほぼ全てが、前年度よりも減少しました。この先、少子化や人口減少はさらに進み、患者数の伸びはあまり期待できそうにありません。また、医師・看護師などの働き手も減って行くことが予想されています。北陸中央病院の医師数もギリギリの状態でやっており、令和8年度も医師の確保が最重要課題になると考えています。4月から新しく病院長になられる池渕先生が各大学の医局に働きかけて、何とか現状の医師数を確保できるように、努力して頂きたいと思います。
最後になりましたが、私は令和8年3月末で、70歳の定年退職を迎えます。北陸中央病院に赴任して16年、病院長になって14年という長きに渡り、地域の患者さん、砺波医療圏の先生方、公立学校共済組合の先生方、および北陸中央病院のスタッフの皆さんには大変にお世話になりました。現在の心境は、皆さんにただただ感謝の念しかありません。「老兵はただ消え去るのみ」という諺があるように、私もそれを踏襲すべく東京に異動しようと思っています。一方で、全国の医学部では外科医不足が顕著であり、自分が消え去った場合でも、大学からは外科医の補充はほぼ望めません。病院および外科にとって、大きな戦力ダウンになるのですが、遅かれ早かれいつかはその日がやって来ます。令和8年4月からの皆さんの頑張りを期待し、遠くから応援させて頂きます。もし老兵をご利用頂ける機会がありましたら、声をおかけ頂ければ嬉しく思います。
来るべき令和8年が、皆様が健康で幸多き年となりますことを祈念して、本稿を終わらせて頂きます。長文にお付き合い頂きまして、ありがとうございました。
(令和8年元旦)






